非機能要件とは?機能要件との違いから定義・確認のポイントまで解説
非機能要件とは?機能要件との違いから定義・確認のポイントまで解説
2026年3月29日

非機能要件は、システムの性能や安全性といった「品質」を定めるものです。具体的な「機能」を定義する機能要件と合わせて明確にすることが、プロジェクトの成否に大きく影響します。なぜなら、優れた機能も、応答速度が遅かったりセキュリティが脆弱だったりすれば、実用に耐えられずビジネスリスクに直結するためです。本記事では、非機能要件の定義と主要項目を具体例と共に解説し、ベンダーへの要求定義や提案評価における実践的なポイントをご紹介します。
目次
- ・
- ・
- ・
- ・
- ・
- ・
非機能要件で定義・確認すべき主要6項目
可用性:システムを安定稼働させるための要件
可用性とは、システムが停止することなく、継続して稼働し続ける能力のことです。具体的には、システムの運用時間や目標稼働率(例:99.9%)などを定めます。
システム障害発生時の目標復旧時間(RTO)やバックアップ体制の構築も、可用性を担保する重要な要素です。24時間365日稼働が求められるシステムと、平日日中のみ稼働するシステムでは、必要な対策やコストが大きく異なります。業務への影響度を十分に考慮し、適切な稼働基準を設定することが求められます。
性能・拡張性:レスポンス速度や将来の負荷増大への備え
性能とは、システムの処理速度や応答時間に関する要件です。利用者がストレスなく操作できるよう、画面表示やデータ処理の目標時間を具体的に設定します。
拡張性は、将来の利用者数やデータ量の増加にシステムが柔軟に対応できるかを示す指標です。サーバーの処理能力を容易に増強できるか(スケールアウト・スケールアップ)といった点を確認します。通常時だけでなく、アクセスが集中するピーク時も想定し、処理能力の限界値や拡張手順を定めておくことが重要です。
運用・保守性:日々の監視やメンテナンスのしやすさ
運用・保守性は、システム稼働後の管理や改修を効率的に行うための要件です。システムの正常稼働を監視する仕組みや、異常検知時の通知・連絡体制などを定義します。
定期メンテナンスのための計画停止の要否や、その時間帯も確認事項です。運用手順が複雑だと管理者の負担が増え、運用コストの増大やヒューマンエラーにつながる可能性があります。効率的で属人化しにくい運用体制を築くため、設計段階から管理のしやすさを考慮することが大切です。
移行性:既存システムからのデータや機能の移行
移行性は、既存システムから新システムへ切り替える際の確実性や手順に関する要件です。移行対象となるデータの種類や量、データ変換のルールなどを明確に定めます。
システムを停止できる時間内に移行作業が完了するか、というスケジュールも重要な検討事項です。業務への影響を最小限に抑えるため、新旧システムの並行稼働期間や、問題発生時の切り戻し手順も計画に含めます。これにより、安全なシステム移行の実現を目指します。
セキュリティ:情報資産を脅威から守るための対策
セキュリティは、サイバー攻撃や内部不正からシステムとデータを保護するための要件です。利用者の認証方法やアクセス権限の管理ルールなどを具体的に定めます。
通信経路や保存データの暗号化、操作ログの記録といった仕組みも重要です。取り扱う情報の機密性に応じて、適切なレベルの防御策を講じる必要があります。法規制や業界ガイドラインへの準拠も確認し、企業の重要な情報資産を安全に管理する体制を構築します。
システム環境・エコロジー:動作環境や環境配慮に関する要件
システム環境・エコロジーは、システムの動作環境や環境配慮に関する要件です。サーバーを設置するデータセンターの耐震性や電源容量、温度・湿度管理などが含まれます。
近年、環境保護の観点から、消費電力の目標値やCO2排出量削減への取り組みも評価対象となる場合があります。これらの要件を定義することで、システムの安定稼動に必要な物理的基盤を確保するとともに、企業の社会的責任(CSR)を果たすことにもつながります。
システム導入・開発における非機能要件定義の進め方
ステップ1:ビジネス要求とシステム特性の整理
まず、システム導入の目的や解決したい経営課題を整理します。現状業務の問題点を洗い出し、新システムで何を目指すのかを明確にします。
同時に、想定利用者数や利用拠点など、システムの基本的な特性を把握します。システム停止が業務に与える影響度を評価し、ビジネス上の優先順位を定めることが重要です。この段階でプロジェクト関係者間の目標を共有し、要件定義の土台を固めます。
ステップ2:要求レベルの具体化と優先順位付け
次に、整理したシステム特性に基づき、主要6項目の要求水準を具体化します。稼働率や応答時間などの目標を数値で設定し、客観的な評価基準を設けることが重要です。
すべての項目で最高水準を求めるとコストが膨らむため、重要度に応じた取捨選択が不可欠です。法令対応など遵守すべき条件と、費用対効果を考慮して調整可能な条件を切り分けることが求められます。限られた予算と期間で効果を最大化するため、要件の優先順位を慎重に判断します。
ステップ3:RFP(提案依頼書)への落とし込み
社内で合意した要件は、開発ベンダーへ正確に伝えるためにRFP(提案依頼書)へ落とし込みます。機能要件だけでなく、性能や保守体制といった非機能要件も漏れなく記載します。
自社のシステム構成やネットワーク環境といった背景情報も共有することで、ベンダーは実現性の高い提案をしやすくなります。評価基準や提出期限なども明記し、選定プロセスの透明性を確保することが大切です。解釈の齟齬が生まれないよう、客観的で分かりやすい記述を心がけます。
ステップ4:ベンダーからの提案評価と合意形成
ベンダーから提出された提案書を、事前に定めた評価基準に沿って精査します。要求した性能やセキュリティ水準が、実現可能な技術で設計されているかを確認します。
費用やスケジュールだけでなく、稼働後の保守サポート体制も重要な評価ポイントです。不明点はベンダーに質問し、解釈に相違がないかを確認しましょう。複数の提案を比較検討し、自社のビジネス目標達成に最も貢献するベンダーを選定します。最終的に契約条件として合意し、開発に向けた協力体制を築きます。
要求レベルとコストのバランス|ビジネス目標から現実的な着地点を探る
システムの性能や安全性を高めるほど、開発・運用コストは増加する傾向にあります。そのため、ビジネス目標と投資可能なコストの最適なバランスを見つけることが重要です。
例えば、ECサイトのように応答速度が売上に直結するシステムであれば、性能への投資が妥当と判断されるケースもあります。一方で、社内の一部門で利用する情報共有システムであれば、コスト効率を重視する判断も考えられます。障害発生時の想定損害額と対策費用を比較し、過剰な品質要求になっていないかを見極める視点も必要です。経営的な視点から投資対効果を判断し、持続可能なシステムの仕様を決定します。
ベンダー選定で失敗しないための非機能要件確認ポイント
RFPへの記載例:要求を具体的に伝える記述方法
RFPでは、曖昧な表現を避け、定量的な数値を明記することが重要です。「速く動くこと」ではなく「検索結果は3秒以内に表示すること」のように具体的に指定します。
同様に、「なるべく止まらないシステム」ではなく「年間稼働率99.9%以上を目標とすること」と記述します。障害復旧に関しても、「4時間以内に主要機能を復旧させ、前日時点のデータを保持すること」のように目標を明確に伝えます。これにより、ベンダー間の提案内容や見積もりの比較が容易になります。
ベンダーの技術力や実績を見極める質問例
ベンダーの技術力を見極めるには、過去の実績に基づく具体的な質問が有効です。例えば、類似規模のシステム構築における障害発生時の対応事例や、実際の復旧時間を尋ねてみるのがよいでしょう。
アクセスが急増した際に、どのような技術で安定性を確保したかを問うのも良い方法です。要件変更時の追加費用の算出基準や、保守体制の具体的な人員配置も確認すべき点です。例えば、大規模システムの構築実績が豊富なベンダーに対しては、具体的な事例を交えて質問すると、技術力や経験値を測りやすくなります。
提案内容を評価する際の比較・判断軸
複数のベンダーを比較する際は、提案された技術の妥当性と長期的な運用体制を評価します。要求した性能に対し、過剰あるいは不足した設計になっていないかを確認しましょう。
特定の製品に依存した設計は、将来の改修を困難にする可能性があるため、汎用的な技術が採用されているかも判断軸となります。初期の開発費用だけでなく、数年間の保守費用を含めた総所有コスト(TCO)で比較する視点も重要です。また、特定の業界に深い知見を持つベンダーも存在します。自社の事業成長に長期的に伴走できる、信頼性の高いパートナーを選定しましょう。
導入成功に向けて 非機能要件定義で押さえるべき最終チェック
定義した非機能要件の妥当性を再評価する
要件定義の最終段階で、決定した非機能要件がビジネス目標と合致しているかを再評価します。設定した目標数値が現場の実態に即しているか、過剰な品質を求めていないかを関係各所と協議しましょう。
性能やセキュリティの基準が、予算内で実現可能であるかをベンダーと共に最終確認します。要件に矛盾や抜け漏れがないかを客観的な視点で検証し、開発工程に進む前に仕様を確定させることが重要です。
導入後の運用・保守体制を具体的に計画する
システム稼働後の管理体制を、開発段階から具体的に計画しておく必要があります。日常の監視や定期メンテナンスについて、自社とベンダーの役割分担を明確に取り決めます。
障害発生時の連絡フローや対応手順を文書化し、関係者間で共有しましょう。運用担当者への教育計画やマニュアル整備も不可欠です。稼働直後の混乱を避けるため、実践的な運用訓練を実施するなど、安定稼働に向けた準備を整えます。
社内関係者との合意形成とプロジェクト推進のコツ
プロジェクトを円滑に進めるには、経営層や利用部門との密な連携が欠かせません。各部門の要望が対立した場合は、全体最適の視点で調整し、意思決定のプロセスを透明化することが大切です。
定期的に進捗を報告し、要件変更が生じた際はその影響や理由を丁寧に説明することで、関係者の理解と協力を得やすくなります。部門間の橋渡し役となる推進体制を構築し、全員が同じ目標に向かう環境づくりがプロジェクト成功の鍵となります。
システム開発・導入を検討中の担当者におすすめのWebアプリケーション開発一覧!
非機能要件に関するよくある質問
非機能要件は、情報システム部門と事業部門のどちらが主導して決めるべきですか?
情報システム部門が技術的な観点から主導しつつ、事業部門がビジネス上の要求を提示する、というように、両者が連携して進めることが理想的です。
システムの可用性や性能目標は、業務への影響を最も理解している事業部門の意見を基に設定する必要があります。情報システム部門は、その要求を技術的な仕様やコストに落とし込み、両部門で最適なバランス点を探ることが求められます。
すべての非機能要件を最高レベルで満たす必要はありますか?優先順位の付け方を教えてください。
すべての要件を最高水準で満たす必要はありません。過剰な品質はコストの増大を招く可能性があります。システムの目的や扱う情報の重要度に応じて、優先順位を付けることが重要です。
例えば、顧客向けサービスなら可用性や応答速度を、社内システムならコスト効率を重視するなど、事業への影響度を基準にメリハリをつけるのがよいでしょう。
アジャイル開発の場合、非機能要件はどのタイミングで検討すればよいですか?
アジャイル開発でも、プロジェクト初期に基本的な非機能要件の方針を定めておくことが重要です。特に、システム全体のアーキテクチャに関わる性能やセキュリティの基準は、後からの変更が困難なためです。
まず大枠の基準を設定し、開発のイテレーション(反復)の中で詳細な要件を具体化し、評価・調整を繰り返していくのが一般的な進め方とされています。
SaaSを導入する場合、ベンダーに非機能要件についてどこまで確認すべきですか?
SaaSは提供元がインフラを管理するため、自社での詳細な設計は不要です。しかし、そのサービスが自社の要求基準を満たしているかを確認する必要があります。
具体的には、SLA(サービス品質保証契約)の内容を確認し、稼働率の保証値やバックアップ頻度、セキュリティ対策などが自社の基準に適合するかを見極めることが重要です。
まとめ ビジネス価値を高める非機能要件定義のポイント
本記事では、システム開発における非機能要件の重要性と、機能要件との違い、そして具体的な定義の進め方について解説しました。非機能要件は、システムの性能や安全性、運用性といった「品質」を担保する土台であり、その定義が曖昧だと、稼働後のトラブルやビジネス機会の損失につながる可能性があります。システム開発を発注する際は、本記事で紹介した主要項目を参考に、自社のビジネス要求に合った要求レベルを具体的に設定し、RFP(提案依頼書)に漏れなく記載することが重要です。また、ベンダーからの提案を評価する際には、初期コストだけでなく、長期的な運用を見据えた保守性や拡張性も判断軸に加え、信頼できるパートナーを選定しましょう。適切な非機能要件定義は、システム投資の効果を最大化し、事業の成長を支える基盤となるでしょう。













