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Webアクセシビリティとは? JIS対応の進め方と適合レベルAAの基準を解説

2026年3月25日

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多くの企業サイトでは、Webアクセシビリティの国際的なガイドラインであるWCAGに準拠した「適合レベルAA」を目標とすることが一般的です。2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法により、事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されました。 これに伴い、Webサイトのアクセシビリティ確保は、すべての企業にとって重要な経営課題となっています。本記事では、Web担当者の方に向けて、対応の基準となるガイドラインの概要から、自社が目指すべき適合レベルの判断軸、具体的な進め方までを解説します。

目次

対応の基準となる主要ガイドライン

国際基準「WCAG」の概要

WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)は、Webアクセシビリティに関する国際的なガイドラインです。 Web技術の標準化団体であるW3Cによって策定され、世界中の国や企業で基準として採用されています。
このガイドラインは特定の技術に依存しない普遍的な要件で構成されているのが特徴です。そのため、デバイスや技術が進化しても、長く適用できる設計指針として活用できます。

日本の国家規格「JIS X 8341-3」との関係性

日本の国家規格である「JIS X 8341-3」は、国際基準のWCAGをもとに制定されました。 そのため、このJIS規格はWCAGと技術的に同等の内容となっています。
JIS規格に準拠することは、実質的に国際的な基準を満たすことにつながります。国内向けサービスであっても、世界標準に沿った品質を担保できるため、多くの企業にとって重要な指針です。

アクセシビリティ確保のための4つの基本原則

WCAGやJIS規格は、以下の4つの基本原則で構成されています。 1つ目は、情報やUIをユーザーが認識できる「知覚可能」。2つ目は、すべての機能が操作できる「操作可能」です。
3つ目は、情報や操作が分かりやすい「理解可能」。そして4つ目は、多様な環境で確実に解釈される「堅牢性」です。これらの原則を満たすことで、さまざまなユーザーが利用しやすいWebサイトを実現できます。

どのレベルを目指すべきか?適合レベルA・AA・AAAの違い

適合レベルA:最低限達成すべき基準

適合レベルAは、アクセシビリティ確保において最低限達成すべき必須の基準です。 このレベルでは、特定のユーザーが情報に全くアクセスできなくなるような、重大な問題を取り除くことが目的とされています。
具体的な項目には、画像への代替テキスト設定や、キーボードのみでの基本的な操作の担保などが含まれます。

適合レベルAA:多くの企業が目標とする推奨基準

適合レベルAAは、レベルAの基準に加え、より多くのユーザーの利便性を高めるための要件を定めています。多くの企業や公的機関が目標として設定している推奨基準です。
テキストと背景のコントラスト比の確保や、画面を拡大しても表示が崩れない設計など、より実用的な項目が含まれており、ユーザビリティ向上に大きく貢献します。

適合レベルAAA:最高レベルだが特定のコンテンツ向け

適合レベルAAAは、3段階の中で最も高いレベルの基準です。 手話による動画コンテンツの提供など、非常に高度な要件が求められます。
すべてのページでこのレベルを達成するのは、技術的・コスト的な負担が大きいため、一般的ではありません。そのため、特に重要な情報を提供するページなど、対象を限定して部分的に適用することが推奨されています。

自社サイトが目指すべき適合レベルの判断軸

多くの企業サイトでは、適合レベルAAへの準拠を目標とするのが一般的です。これは公的機関にも求められる水準であり、企業の社会的責任を示す上での一つの目安となります。
ただし、いきなりレベルAAの完全準拠を目指すのは難しい場合もあります。まずはレベルAの必須項目を確実にクリアし、その後、段階的にレベルAAの達成を目指すアプローチが現実的でしょう。自社のリソースに合わせて、無理のない計画を立てることが重要です。

【チェックリスト】適合レベルAAの主要な達成基準

【知覚可能】テキスト以外のコンテンツへの配慮

視覚情報に頼れないユーザーのため、画像にはその内容を説明する代替テキスト(alt属性)を設定します。ただし、装飾目的の画像には空のalt属性を指定し、音声読み上げソフトが不要な情報を読み上げないよう配慮が必要です。
また、動画や音声コンテンツには字幕やテキストの書き起こしを用意し、聴覚に頼らずとも内容を理解できる手段を提供します。

【操作可能】キーボードのみで全ての機能が利用できるか

マウスが使えないユーザーでもナビゲーションできるよう、キーボード操作のみでサイト内の全機能を利用可能にする必要があります。リンクの移動やフォームの送信などが、TabキーやEnterキーだけで完結するようにします。
その際、現在どの項目を選択しているか視覚的にわかるよう、フォーカス表示を明確にすることも重要です。また、自動で動くコンテンツには、ユーザーが再生や停止を制御できる機能を設けましょう。

【理解可能】読みやすく、理解しやすいコンテンツか

ユーザーが直感的にサイトを操作できるよう、ナビゲーションの配置やデザインに一貫性を持たせることが大切です。これにより、目的の情報を見つけやすくなります。
また、入力フォームでエラーが発生した際には、単にエラーであることだけを伝えるのではありません。どこに誤りがあり、どう修正すべきかを具体的に示すことで、ユーザーがスムーズに操作を完了できるよう支援します。

【堅牢性】将来の技術でも利用できるか

様々なブラウザや支援技術で正しく表示・解釈されるよう、HTMLの仕様に準拠した正しい文書構造で記述することが求められます。例えば、開始タグと終了タグを正しく対応させる、といった基本的なルールを守ることが重要です。
これにより、将来登場する新しい技術やデバイスでもコンテンツが利用できる可能性が高まり、技術環境の変化に対応できる堅牢なサイトを維持できます。

Webアクセシビリティ対応の基本的な進め方 4ステップ

ステップ1:現状把握と方針策定

はじめに、自社サイトの現状を把握します。専用ツールや専門家の診断を活用し、アクセシビリティに関する課題を洗い出すことから始めましょう。その結果に基づき、対応方針を策定します。
方針には、対象範囲、目標とする適合レベル、達成時期などを具体的に盛り込みます。これを明文化することで、関係者全員が共通認識を持ってプロジェクトを進めることができます。

ステップ2:対象範囲と目標レベルの決定

サイト全体を一度に対応することが難しい場合、現実的な対象範囲を定めることが重要です。例えば、アクセス数の多い主要ページや、事業への影響が大きいページから優先的に着手する方法があります。
目標レベルも同様に、最終的に適合レベルAAを目指しつつ、まずは一部の基準を満たすなど、段階的な計画を立てるとよいでしょう。自社のリソース状況に合わせたロードマップを描くことが成功の鍵です。

ステップ3:設計・実装・修正

方針と計画が決まったら、具体的な改修作業に移ります。デザインと実装の両面から、ガイドラインに沿った修正を進めていきましょう。コントラスト比の見直しや代替テキストの追加などが主な作業となります。
この段階では、開発者だけでなくコンテンツの作成担当者もガイドラインを理解することが重要です。これにより、今後公開されるページで新たな問題が発生するのを防ぎ、品質を維持できます。

ステップ4:試験の実施と結果の公開

改修作業が完了したら、目標とした適合レベルを満たしているかを確認するための試験を行います。自動チェックツールによる機械的な検証と、専門家による手動検証を組み合わせることで、より正確な評価が可能です。
試験後は、その結果をWebサイト上で公開することが推奨されます。これにより、アクセシビリティ向上への取り組みを社外に示し、企業の透明性を高めることができます。

「全ページ一括」か「段階的」か?現実的な対応スコープの判断基準

対応を全ページ一括で行うか、段階的に進めるかは、サイトの規模や予算に応じて判断します。小規模なサイトであれば一括対応も可能ですが、大規模サイトの場合は段階的なアプローチが現実的です。
例えば、利用頻度の高いトップページや問い合わせフォームから優先的に対応を進めます。また、システムの基盤が古く改修が難しい場合は、サイトリニューアルのタイミングで根本的に対応することも有効な選択肢です。自社の状況に合わせ、継続可能な計画を立てましょう。

効率的な対応を実現する支援ツール・診断サービスの選び方

自動チェックツールと専門家による手動診断の違い

自動チェックツールは、代替テキストの有無やコントラスト比など、機械的に判断できる項目を網羅的に検出するのに役立ちます。定期的なモニタリングにも適しています。
一方、専門家による手動診断では、代替テキストの内容が適切か、情報の読み上げ順序が自然かなど、人の判断が必要な項目を検証します。両者を組み合わせることで、より高い品質を確保できます。

診断サービス・コンサルティング会社選定で確認すべきポイント

外部の専門会社を選ぶ際は、公的機関や大手企業での支援実績を確認するとよいでしょう。実績は技術力や信頼性を判断する一つの指標となります。また、単に問題点を指摘するだけでなく、自社の事業や運用体制をふまえた上で、現実的な改善計画を提案してくれるかも重要なポイントです。
改善後の運用を見据え、担当者向けの教育や継続的なサポート体制が整っているかもあわせて確認しましょう。

既存サイトの改修か、リニューアルかの判断基準

既存サイトのアクセシビリティ対応では、部分的な改修で済むか、サイトリニューアルが必要かを判断します。ソースコードの調整など軽微な修正で対応できる場合は、改修の方がコストを抑えられます。
しかし、サイト全体のデザインやCMS(コンテンツ管理システム)の基盤に根本的な問題がある場合は、改修に多くの工数がかかることがあります。このようなケースでは、サイト全体をリニューアルする方が、結果的に費用対効果が高くなることもあります。

Webアクセシビリティ対応を組織で推進するための次の一歩

策定した方針を社内で共有し、理解を得る

アクセシビリティ対応は、特定の担当者だけでなく組織全体で取り組むべき課題です。策定した方針や目標は、経営層から現場担当者まで広く共有し、その重要性について理解を得る必要があります。
対応によるビジネス上のメリットやリスク軽減効果などを伝え、社内勉強会などを通じて全社的な協力体制を築くことが、プロジェクトを円滑に進める上で不可欠です。

継続的な運用体制の構築と担当者の育成

Webサイトは継続的に更新されるため、一度対応しただけでは品質を維持できません。アクセシビリティを保つための運用体制を構築することが重要です。例えば、コンテンツ作成時のルールを定めたガイドラインを整備することで、品質の低下を防ぎます。
また、定期的な研修を実施し、担当者の知識やスキルを向上させることも欠かせません。これにより、組織内にノウハウを蓄積していくことができます。

定期的な診断と改善サイクルの確立

一度確保した品質を維持・向上させるためには、定期的な診断と改善のサイクルを確立することが不可欠です。自動チェックツールによる日々のモニタリングと、年に一度などの専門家による詳細な診断を組み合わせると効果的です。
診断で発見された課題は、その都度改善計画に反映させます。このように継続的な改善活動を続けることで、常に高いレベルのアクセシビリティを維持できます。

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Webアクセシビリティに関するよくある質問

Webアクセシビリティ対応にかかる費用の目安はどのくらいですか?

対応費用は、サイトの規模、現状の課題、目標とする適合レベルによって大きく異なります。一概に目安を示すのは難しいのが実情です。専門家による診断やコンサルティングを依頼する場合、数十万円から数百万円規模になることもあります。
改修作業を外部に委託する場合は、修正範囲に応じて費用が変動します。まずは専門の会社に現状を診断してもらい、課題の全体像を把握した上で見積もりを取得するとよいでしょう。

既存のWebサイトを後からアクセシビリティ対応にすることは可能ですか?

はい、既存のWebサイトを後からアクセシビリティ対応にすることは可能です。代替テキストの追加や見出し構造の修正など、比較的軽微な修正から着手し、段階的に品質を向上させることができます。
ただし、サイトの根本的な構造やシステムに大きな問題がある場合は、部分的な改修では対応が難しいこともあります。その場合はサイトリニューアルを検討する方が、結果的に効率的かもしれません。まずは専門家による現状分析が重要です。

アクセシビリティとユーザビリティの違いは何ですか?

アクセシビリティは、「誰でも情報にアクセスできるか」という、利用の前提条件を確保することを目指します。高齢者や障害のある方など、多様なユーザーが対象です。
一方、ユーザビリティは「アクセスできたユーザーが、いかに使いやすいか」という、利用のしやすさや満足度を追求する概念です。 両者は密接に関係しており、アクセシビリティという土台の上に、高いユーザビリティを構築することが理想的なWebサイトの姿といえます。

まとめ 基準を理解し自社に合った対応計画を立てよう

本記事では、Webアクセシビリティの基本から、国際基準であるWCAG(JIS X 8341-3)の概要、そして目指すべき適合レベルについて解説しました。改正障害者差別解消法の施行により、事業者による合理的配慮の提供が義務化された今、アクセシビリティ確保はすべての企業にとって重要な経営課題です。 多くの企業では、公的機関にも推奨される「適合レベルAA」を目標とすることが一般的ですが、自社のリソースに応じて段階的に進める計画が現実的でしょう。まずはこの記事で紹介した進め方を参考に、自社サイトの現状把握から着手し、対応方針を策定することから始めてみてはいかがでしょうか。必要に応じて専門家の診断サービスなども活用しながら着実に改善を進めていくことが、多様なユーザーに選ばれるサイトへの第一歩となります。

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