労働時間の管理が義務化!厚生労働省発表のガイドラインを徹底解剖!

Last Updated on 2023-08-02 by HanafusaYuki

多くの企業によって「働き方改革」が推進されている昨今、労働時間の管理がいままで以上に重視されています。

働き方改革を推進するために、厚生労働省は2019年4月の労働安全衛生法改正によって、「企業が従業員の労働時間を客観的に把握しておくこと」を義務化しました。

この義務は労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用される全ての事業場が適用範囲となっています。

要するに、企業規模に関係なく、従業員を雇うすべての企業が対象範囲となり、遵守しなければ法律違反ということになります。

この記事では、労働時間の管理とは具体的に誰が何をすればよいのか、適切な労働管理を支援するITサービスを紹介します!

そもそも労働時間とは

そもそも労働時間とは何でしょうか。当たり前に使っているこの言葉の定義を一度確認しておきましょう。

平成12年の三菱重工長崎造船所事件の最高裁第一小法廷判決では

労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間のこと

平成12年3月9日最高裁第一小法廷判決 三菱重工長崎造船所事件

と定義されています。

明示的な指示か暗黙的な指示かに関わらず、使用者の指示によって労働者が業務を行う時間は労働時間に当たります。

注意すべき点は、労働時間に当たるかはどうかは契約は規則によって決定づけられるものではなく、客観的に見て、労働者の行う業務が使用者から義務付けられたものといえるか否か等によって決定づけられることです。

例えば、いわゆる「手待時間」のような、使用者の指示があった場合、即座に業務を開始することを求められ、労働から離れられず待機している時間も労働時間に含まれます。

また使用者の指示による、業務に必要な準備行為や、業務に関連した後始末を事業所内において行った時間も労働時間に該当します。
飲食店でいうと、所定の服装に着替える時間も労働時間となるわけです。

逆に、個人的な電話や会話、またトイレ休憩や喫煙等をしている時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間ではありませんから、労働時間には該当しません。

誰が誰の労働時間を管理する義務があるの?

それでは、以上のような労働時間を把握しなければいけない企業の条件、管理対象となる労働者の定義は一体何でしょう。

誰が誰の労働時間を管理することが義務付けられているのでしょうか。

2016年(平成28年)以降、長時間労働による過労死事件が明るみにでたことをきっかけに「働き方」の見直しが求められるようになりました。
この動きを受けて翌年1月に厚生労働省が発表した『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』では、今まで明確ではなかった労働基準法の解釈が明らかに示され、具体的に実施すべき措置が説明されています。

参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)

労働時間管理は原則全ての企業に義務づけられている!

このガイドラインによると、労働時間の適切な管理は「使用者」の責務です。

労働者ではなく、企業側の責任であるという点に留意する必要があります。

そしてその企業というのは、従業員数に関わらず、原則全ての企業が義務の対象となっています。

しかし従業員人数が少ないなど、小規模な企業は労働時間管理(すなわち勤怠管理)の義務がないと誤って認識している企業も少なくありません。

社会保険加入義務や就業規則の作成義務は従業員数が少ないと発生しない場合がありますが、労働時間管理は1名でも従業員を雇っていれば、原則すべての企業で義務が生じます。

※労働基準法第41条により、農林水産業など労働時間の規定が適用されない事業所は除外されることがあります。

「労働時間管理」の対象となる労働者

それでは、原則すべての企業は、「誰の」労働時間を管理する義務があるのでしょうか。

このガイドラインでは、労働時間管理の対象者について、次のように定められています。

本ガイドラインに基づき使用者(使用者から労働時間を管理する権限の委譲を受けた者を含む。以下同じ。)が労働時間の適正な把握を行うべき対象労働者は、労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除く全ての者であること。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

原則として雇用契約や労働契約の内容、働き方の形態にかかわらず、全ての労働者が対象です。

ここで管理義務から除外されている「労働基準法41条に定める者」は、例えば、管理監督者が挙げられます。管理監督者とは、一般的には部長や工場長といった労働条件の決定やその他労務管理について経営者と対等な立場にある者と定義されます。

より具体的には、労働基準法第41条では下記の状況に当てはまる労働者については、使用者が労働時間の管理を行う義務はないと定められています。

・農業・水産業に従事する者

・事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

・監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者

ただし、管理職であれば必ずガイドラインの対象外になるわけではありません。役職名にとらわれず、職務の内容等から実態に即して判断されます。

また、「みなし労働時間制」とは、

① 事業場外で労働する者であって、労働時間の算定が困難なもの(労働基
準法第38条の2)
② 専門業務型裁量労働制が適用される者(労働基準法第38条の3)
③ 企画業務型裁量労働制が適用される者(労働基準法第38条の4)

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

と定義されています。

しかし、みなし労働時間制で働く従業員については労働時間を把握する必要がない、というわけではありません。労働時間の詳細な把握ができない場合にも、状況に即した労働時間の管理を行い、すべての従業員の健康と安全を守ることが企業の責務といえるでしょう。

労働時間の適正な管理のためにしなければいけない7つのこと

厚生労働省が発表したガイドラインには、企業が「労働時間の適正な把握のために講ずべき措置」として7つの項目を挙げています。違反した場合罰則規定が設けられているものもありますので、ひとつひとつ見ていきましょう。

1.始業・終業時刻の確認・記録

使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。労働時間の適正な把握を行うためには、何時間働いたのかを把握するだけではなく、労働日ごとに何時から何時まで働いたのかを確認・記録し、これを基に何時間働いたかを把握・確定する必要があります。

2.始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法

ガイドラインでは、始業・終業時刻を正確に記録するための方法も明確に提示しています。

使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。
(イ) タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

使用者が、労働者の始業・終業を自ら確認することができない場合には、「客観的な記録方法」が必要です。使用者も労働者も不正を行うことがないよう、公正に判断できる手段を使いましょう。

(ア)について、ここでいう「自ら現認する」とは、使用者自ら、あるいは労働時間管理を行う者が、直接始業時刻や終業時刻を確認することを指します。

3.自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

労働形態によっては、始業時刻・終業時刻を本人の自己申告によって記録せざるをえないこともあるでしょう。その場合に講ずべき措置についても、ガイドラインに記載があります。

1.自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者と管理対象者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

2.自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること。

3.自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。

4.労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと。 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

労働者に正しい自己申告を求めることと、その申請によって使用者も労働者を不利益を被らないよう注意することが、適切な対応として定められています。

自己申告制では、時間外労働を申告せず、いわゆる「サービス残業」が常習化することなど、あいまいな労働時間管理となる可能性が高いため、やむを得ず、自己申告制により始業時刻や終業時刻を把握する場合に講ずべき措置をガイドラインでは明らかにしています。

記録された労働時間と実態に乖離がないか、適正な労働時間の申告を阻害していないか注意していくことが重要となります。

4.賃金台帳の適正な調製

 使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金に処されること。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

残業分の賃金や深夜割増賃金の未払いといった問題等によって、使用者が労働時間を適切に管理していない場合があるため、労働基準法では、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けることを使用者に義務付けています。

違反した場合、30万円以下の罰金を科せられる可能性があります。

5.労働時間の記録に関する書類の保存

使用者は、労働者名簿、賃金台帳のみならず、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類について、労働基準法第109条に基づき、3年間保存しなければならないこと。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

労働基準法107条から109条によって「法定三帳簿」と呼ばれる労働者名簿、賃金台帳、出勤簿の3つの書類は、作成と管理とあわせ、3年間保存(保管)することが義務付けられています。

こちらも罰則規定が設けられており、違反した場合、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

6.労働時間を管理する者の職務

事業場において労務管理を行う部署の責任者は、当該事業場内における労働時間の適正な把握等労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、労働時間管理上の問題点の把握及びその解消を図ること。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

こちらは人事や労務の担当役員、担当部署の責任者が労働時間が適正に把握されているか、過重な長時間労働が行われていないかといった労働時間管理上の問題があればどのような措置を講ずべきかなどについて検討すべきであることを明らかにした項目です。

7.労働時間等設定改善委員会等の活用

使用者は、事業場の労働時間管理の状況を踏まえ、必要に応じ労働時間等設定改善委員会等の労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状を把握の上、労働時間管理上の問題点及びその解消策等の検討を行うこと。

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

自己申告制により労働時間の管理が行われている場合等においては、必要に応じ、労使協議を行う組織を活用し、労働時間管理の現状の問題点や解消策等について検討することが望まれます。

適切な労働時間管理のためには勤怠管理システムがおすすめ

労働時間管理の方法として、一般的に「Excelによるテンプレート」「タイムカード」「勤怠管理システム」の3種類が利用されています。

しかし、法定三帳簿の保存や、自己申告の勤怠管理、始業・終業時間以外の労働時間の管理を一括で行うには、Excelやタイムカードでは難しく、ましてや使用者が労働者全員の始業・終業を毎日自身で確認することは、中規模以上の組織では難しいでしょう。

そこで、前章までで述べたガイドラインが求める労働時間管理をすべて満たすために、勤怠管理システムの利用をお勧めします。

勤怠管理システムを使えば、ストレスなく、担当者の業務負担やコストを削減することが可能です。

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残業時間をめぐるトラブルは、どの企業でも起きる可能性があります。とくに働き方改革が広まったことで、今までないがしろにされていた法令についても、遵守することが厳しく求められています。

ガイドラインに従って労働時間を管理し、企業も従業員も納得のいく労働環境を整えましょう。