AI-OCRとは?従来のOCRとの違い、メリット、選び方を徹底解説

請求書や注文書など、日々発生する紙帳票のデータ入力に多くの時間を費やしていませんか。手作業による入力は時間がかかるだけでなく、人的ミスも発生しがちで、業務効率化の大きな課題となっています。このような課題を解決する技術として注目されているのが「AI-OCR」です。本記事では、AI-OCRの基礎知識から導入メリット、具体的な活用例、そして自社に合ったサービスの選び方まで、主要なポイントを解説します。
目次
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AI-OCR導入が業務効率化につながる3つのメリット
メリット1:データ入力業務の自動化による生産性向上
AI-OCRを導入する大きなメリットは、データ入力にかかる時間を大幅に短縮できる点です。スキャナーで読み込んだ画像データからAIが文字情報をテキスト化するため、人が一文字ずつ入力する必要がなくなります。
これまで数時間かかっていた入力作業が数分で完了するケースもあり、業務スピードの大幅な向上が見込めます。これにより、従業員は単純な入力作業から解放され、より付加価値の高いコア業務へリソースを集中させることが可能になります。
メリット2:人的ミスの削減とデータ品質の向上
手作業による入力では、疲労や集中力の低下に伴うタイプミスや見落としが起こりがちですが、AI-OCRは一定の品質を保ったまま処理を継続できます。AIが高い精度で文字を認識し、システム連携やRPAと組み合わせることで、転記ミスなどのヒューマンエラーを削減する効果が期待できます。
もちろん、最終的な目視確認は必要になるものの、ゼロから入力する場合と比較して確認作業の負担は軽くなります。結果としてデータの正確性が高まり、業務品質全体の向上につながるとともに、ミスによる手戻りや修正にかかる工数も削減されるでしょう。
メリット3:人件費や作業工数といったコストの削減
データ入力業務の自動化とミスの削減は、結果としてコスト削減につながります。入力担当者の残業時間を短縮したり、繁忙期における臨時スタッフの採用コストなどを抑えたりすることが期待できます。
また、紙の書類をデジタルデータ化することで、物理的な保管スペースが不要になり、倉庫代や管理コストの削減にも寄与します。さらに、ペーパーレス化が進むことで書類の検索や共有にかかる時間も短縮され、組織全体のコストパフォーマンス向上に貢献します。
AI-OCRで効率化できる業務と活用例
請求書・領収書の処理業務
経理部門における請求書や領収書の処理は、AI-OCRの導入効果を実感しやすい領域の一つです。取引先ごとにフォーマットが異なる請求書でも、AIが発行日、金額、取引先名といった主要項目を自動で認識し、抽出します。
会計システムと連携させれば、仕訳入力の手間が省かれ、月次決算の早期化にも貢献するでしょう。インボイス制度への対応においても、適格請求書発行事業者の登録番号の読み取りや照合を効率化するツールとして活用が進んでいます。例えば「LINE WORKS OCR」のようなサービスでは、請求書や領収書に特化した項目を自動で認識・抽出する機能が提供されています。
契約書・申込書の管理業務
法務や総務、営業事務などの部門では、契約書や申込書のデータ化にAI-OCRの活用が期待できます。紙で保管されている契約書をスキャンしてテキストデータ化することで、契約期間や更新日、取引条件などの重要項目をデータベース化できます。
これにより、必要な書類をキーワード検索で迅速に探し出せるようになり、契約更新の管理漏れを防ぐことにもつながります。また、手書きの申込書に記載された顧客情報も速やかにシステムへ登録できるため、サービス開始までのリードタイム短縮にも貢献します。
FAXや紙の注文書・発注書の受注処理
製造業や卸売業など、FAXや紙媒体での受発注が依然として多い業界では、注文書の入力業務が大きな負担となっています。AI-OCRは、FAXで受信した手書きの注文書や、ノイズが混じった低画質の帳票でも高い精度での読み取りが期待できます。
受注内容を販売管理システムへ自動連携する仕組みを構築すれば、入力ミスによる誤出荷のリスクを低減し、受注から出荷までのプロセスを円滑に進めることができます。中には「DynaEye 11」のように、ドットプリンターやFAXからの出力帳票の読み取りに対応した製品もあります。
アンケートや各種申請書のデータ化
自治体やマーケティング部門などで実施されるアンケートや各種申請書の集計業務も、AI-OCRの活用が有効な分野です。自由記述欄を含む手書き文字や、チェックボックスの回答などを一括でデータ化できることから、集計作業にかかる時間を大幅に短縮できます。
大量のアンケート結果を素早く分析データとして活用できるほか、自治体における給付金申請など、大量処理が求められる業務においても、迅速な対応と職員の負担軽減に貢献します。「eas」のような、人力での確認・修正を組み合わせたBPO一体型のサービスは、特に精度が求められる場面で有効です。
AI-OCR導入の進め方|失敗しないための4ステップ
ステップ1:現状の課題と導入目的の明確化
AI-OCRの導入を成功させるには、まず現状の業務プロセスにおける課題を洗い出し、導入目的を明確にすることが重要になります。どの業務でどのような帳票を扱っており、どれくらいの入力工数やミスが発生しているのかを定量的に把握することが望ましいです。
「入力時間を50%削減する」「ペーパーレス化を推進する」といった具体的なゴールを設定することで、適切なツールの選定基準が定まり、導入後の効果検証も行いやすくなるでしょう。
ステップ2:対象業務の選定と費用対効果の試算
次に、AI-OCRを適用する対象業務を選定します。すべての帳票を一度にデジタル化するのではなく、処理枚数が多く、定型的なフォーマットで効果が出やすい業務から優先的に選ぶのが一般的な進め方です。
選定した業務について、現状の人件費や作業時間と、AI-OCR導入にかかる初期費用やランニングコストを比較し、費用対効果(ROI)を試算します。この段階で、導入によってどれだけのコスト削減や生産性向上が見込めるかをシミュレーションしておくことが、社内承認を得る上でも重要になります。
ステップ3:PoC(実証実験)による精度・効果の検証
本格導入の前に、実際の帳票を用いてPoC(概念実証)を行うことが推奨されます。トライアル版やデモ環境を利用して、自社で扱っている特有の帳票や手書き文字が、期待通りの精度で読み取れるかを検証します。
また、操作性や処理速度、既存システムとの連携のしやすさなども確認します。カタログ上の認識率と、実際の業務環境での認識率は異なる場合があるため、このステップで実務に耐えうるかを慎重に見極めることが大切です。
本格導入と社内運用体制の構築
PoCでの検証結果に問題がなければ、本格導入のフェーズに進みます。導入にあたっては、現場の担当者がスムーズに利用できるよう、操作マニュアルの作成や研修を実施することが望ましいです。
また、読み取りエラーが発生した場合の対応ルールや、データの確認・修正フローといった運用体制を構築します。導入初期はトラブルが発生することも想定されるため、ベンダーのサポートを活用しながら、徐々に適用範囲を広げていく段階的な導入が推奨されます。
読み取り結果の確認・修正フローはどう設計する?運用ルール策定のポイント
AI-OCRの認識精度は高いものの、100%の精度を保証するものではありません。そのため、読み取り結果を人が確認し、必要に応じて修正するフローを組み込むことが不可欠です。
運用ルールを策定する際は、AIが示す「確信度スコア」を活用し、スコアが低い項目のみを重点的にチェックするなど、確認作業の効率化を図る工夫が有効な手段です。また、誰がいつ確認・修正を行ったかを記録する承認プロセスを設けることで、データの信頼性を担保し、内部統制を強化することも重要になります。
AI-OCRの費用相場と料金体系の種類
初期費用と月額固定費用の目安
AI-OCRサービスの料金体系はクラウド型が主流であり、初期費用と月額利用料で構成されるのが一般的といえるでしょう。初期費用は、「SmartRead」や「LINE WORKS OCR」のように無料のサービスから、導入支援込みで数十万円かかるものまで幅が見られます。
月額費用は、基本利用料として数万円から十数万円程度が目安ですが、機能の多さや利用可能なアカウント数、サポート内容によって変動します。スモールスタート向けの安価なプランから大規模利用向けのプランまで多様な選択肢があるため、自社の規模に合わせて選定することが可能です。
読み取り枚数に応じた従量課金制の仕組み
多くのAI-OCRサービスでは、月額固定費に加え、読み取り枚数や項目数に応じた従量課金制が採用されているケースが多く見られます。例えば、月に数千枚までは定額で、それを超えると1枚あたり数円から数十円の追加料金が発生するといった形式です。
また、読み取る項目数(フィールド数)で課金される場合もあります。繁忙期と閑散期で処理量が大きく変動する場合は、月ごとの利用量に合わせて料金が変わるプランや、超過分のみ課金されるプランを選ぶことで、コストを最適化できるでしょう。
自社に合うAI-OCRサービス選定のための5つの比較ポイント
ポイント1:対応帳票の種類とフォーマット(定型・非定型)
自社で処理したい帳票の種類に対応しているかは、最も基本的な選定基準となります。定型帳票(申込書などレイアウトが固定されたもの)だけでなく、非定型帳票(請求書など取引先ごとにレイアウトが異なるもの)に対応しているかを確認しましょう。
特に請求書処理を効率化したい場合は、「スマートOCR」のように非定型帳票の読み取りに強みを持つサービスを選ぶことが重要です。 また、手書き文字の認識が必要な場合は、手書き対応の有無とその精度も重要なチェックポイントです。
ポイント2:読み取り精度とAIの学習機能
文字認識の精度は業務効率に直結するため、非常に重要なポイントです。特に、日本語の手書き文字、縦書き、訂正印、チェックボックスなどが混在する複雑な帳票を、どの程度正確に読み取れるかを確認しましょう。
また、AIの学習機能が備わっているかも確認したい点です。利用を重ねることでAIが学習し、読み取り精度が向上するサービスであれば、長期的な運用で誤読修正の手間を削減できます。例えば「AIRead」のように、ユーザー自身でAIに追加学習をさせ精度を高められる製品もあります。 PoCなどを通じて、自社の実際のデータで精度を確かめることが推奨されます。
ポイント3:既存システム(RPA・会計ソフト等)との連携性
AI-OCRでデータ化した情報を、その後の業務でどのように活用するかを考慮し、既存システムとの連携性を確認します。CSV出力機能は多くのサービスに備わっていますが、API連携が可能かどうかも重要なポイントです。
会計ソフトや顧客管理システム、RPAツールとスムーズに連携できれば、データ入力からシステム登録まで一連の業務を大幅に自動化することも視野に入ります。「SmartRead」のように、主要なRPAツールとの連携コネクタを無償提供しているサービスもあり、導入済みのシステムと親和性の高い製品を選ぶことで、全体の業務フローを最適化できます。
ポイント4:料金体系は自社の利用量に見合っているか
前述の通り、料金体系はサービスによって異なるため、注意が必要です。自社の月間処理枚数や予算に見合ったプランがあるかを確認しましょう。
少量の利用であれば従量課金や安価な定額プランが適していますが、大量の処理を行う場合は、ボリュームディスカウントがあるプランや、「DynaEye 11」のように枚数無制限の定額プランが用意されている製品の方がコストパフォーマンスに優れる場合もあります。 導入後の業務拡大も見据えて、柔軟にプラン変更ができるかどうかも確認しておくと安心でしょう。
ポイント5:導入・運用時のサポート体制
導入時の設定支援や、運用中のトラブル対応など、ベンダーのサポート体制も比較すべき重要なポイントです。特に初めてAI-OCRを導入する場合や、社内にIT専任者がいない場合は、手厚いサポートが受けられるサービスを選ぶとスムーズな導入が期待できます。
電話やメールでの問い合わせ対応はもちろん、初期設定の代行や、精度向上のためのチューニング支援、活用セミナーの開催など、定着まで伴走してくれるサポートがあるかを確認しましょう。セキュリティ対策についての情報開示も、信頼性を判断する上での材料になります。
「精度99%」の落とし穴|実務で読み取り精度が低下する要因とは?
多くのAI-OCRサービスが「認識精度99%以上」といった数値を掲げていますが、これはあくまで良好な条件下でのテストデータに基づく場合が多いため注意が必要でしょう。実務では、スキャン画像の解像度不足、傾き、汚れ、薄い文字、癖の強い手書き文字など、精度を低下させる要因が多数存在します。
また、似通った文字(例:「0」と「O」、「1」と「l」)の誤認識も起こり得ます。そのため、カタログスペックを鵜呑みにせず、実際の帳票環境でどの程度の精度が出るかを検証し、100%ではないことを前提とした運用フローを組むことが現実的なアプローチです。
AI-OCR導入効果を最大化するためのポイント
導入目的を再確認し、関係部署と連携する
AI-OCRの導入効果を最大化するには、単にツールを導入するだけでなく、業務プロセス全体を見直す視点が重要です。当初の導入目的(例:経理業務の残業時間削減など)に立ち返り、前後の工程を含めた業務フローの最適化を図りましょう。
そのためには、システム部門だけでなく、実際にツールを利用する現場の部署や、データを利用する後工程の部署とも密に連携し、全社的な協力体制を築くことが成功の鍵といえるでしょう。
スモールスタートで効果を検証しながら範囲を拡大する
最初から全社のあらゆる帳票をAI-OCR化しようとすると、設定や調整に時間がかかり、現場の混乱を招くリスクが考えられます。まずは特定の部署や特定の帳票(例:定型フォーマットの申込書のみなど)に限定してスモールスタートし、成功体験を積むことが有効な方法です。
そこで得られたノウハウや効果検証の結果をもとに、徐々に適用範囲を他の帳票や部署へと拡大していくことで、リスクを抑えながら着実に導入効果を高めていくことにつながります。
継続的な運用改善と効果測定の計画を立てる
AI-OCRは導入して終わりというわけではありません。運用開始後も定期的に読み取り精度をモニタリングし、誤読が多い項目については設定の見直しやAIの再学習を行うなど、継続的なチューニングが求められる場合があります。
また、処理時間やコスト削減効果を定期的に測定し、導入前の目標と照らし合わせることで、運用の改善点が見えてきます。現場からのフィードバックを吸い上げ、運用ルールやマニュアルを適宜更新していくPDCAサイクルを回すことが、長期的な効果の最大化につながるでしょう。
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まとめ:AI-OCRでデータ入力業務を自動化し、生産性を向上させましょう
本記事では、AI-OCRの基礎知識から導入メリット、選定ポイントまでを解説しました。AI-OCRは、AI技術により従来のOCRの課題であった読み取り精度を大幅に向上させ、請求書や注文書などのデータ入力業務を自動化する強力なソリューションです。導入により、業務効率化や人的ミスの削減、コスト削減といった直接的な効果が期待できます。成功の鍵は、自社の課題を明確にした上で、対応帳票や精度、既存システムとの連携性などを多角的に比較し、最適なサービスを選定することにあります。まずは特定の業務からスモールスタートし、PoC(実証実験)で費用対効果を検証することから始めてみてはいかがでしょうか。



