建設コンサルティング

建設コンサルタント業界の構造と動向を解説|市場規模・主要プレイヤー・課題

2026年5月2日

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結論から言うと、建設コンサルタント業界は、官公需を中心とした成熟市場でありながら、インフラ老朽化対策・国土強靭化・GX・DXを背景に長期的な需要拡大が見込まれる構造的に底堅い業界です。市場規模は建設コンサルタンツ協会会員企業ベースで1兆円超の水準で推移し、3,959社の登録企業のうち中小規模が大半を占める一方、大手・中堅・専門特化型がそれぞれ異なる強みで棲み分けています。本記事では、自社の新規事業検討や社内向け業界レポート作成に活用できるよう、市場規模・構造・主要プレイヤー・トレンド・課題・発注方式までを国土交通省や建コン協会の公表情報をもとに体系的に整理します。

目次

建設コンサルタント業界の市場規模と推移

国内市場規模

建設コンサルタンツ協会(JCCA)の公表資料によれば、会員企業のコンサルタント部門売上高は1997年度に1兆332億円に達した後、減少を経て2012年度から増加傾向に転じ、2020年度には1兆735億円となり、2021年度の微減を挟んで2022年度から再び増加に転じています。
2023年度の会員企業売上高は1兆1,309億円(501社)で、平成26年度から約63%の伸びです。

国内公共事業に関する建設コンサルタント業務の契約金額は、令和4年度時点で平成24年度から約50%増加しています。市場全体としては、底堅い需要に支えられた成熟市場と整理できます。

公共・民間の発注比率

建設コンサルタント業界の受注先は、官公庁(国・地方自治体)が大半を占めます。主要な発注者は国土交通省の各地方整備局、都道府県や市区町村、NEXCOや都市再生機構などの公的機関です。

業務分野別では、道路部門と河川・砂防および海岸部門の比重が大きく、この2部門で全体の過半を占めるとされています。民間からの受注も存在しますが、市場全体に占める割合は限定的です。
官公需中心の構造は経営安定性に寄与する一方、公共事業予算の動向に業績が左右されやすい側面もあります。

業界構造と主要プレイヤー

登録企業数と企業規模の分布

国土交通省に登録している建設コンサルタントの企業数は、2023年3月時点で3,959社であり、直近10年では横ばいで推移しています。建設コンサルタンツ協会の会員企業数は、2023年3月末時点で504社です。

資本金規模別に見ると、資本金2,000万円未満の企業が全体の約50%を占め、5,000万円未満まで含めると約80%に達します。中小規模の企業が業界の大部分を構成しているのが特徴です。

大手・中堅・専門特化型の分類

業界のプレイヤーは、規模と専門性で整理できます。大手総合コンサルタントは、複数の登録部門を網羅し、国内外の大型案件に対応します。
中堅は地域密着や特定分野での実績を強みとします。専門特化型は橋梁、地質、上下水道、環境などの特定領域で高い専門性を発揮します。

売上高上位の主要企業

業界をリードする企業として、ID&Eホールディングス(旧:日本工営)、建設技術研究所、パシフィックコンサルタンツ、オリエンタルコンサルタンツホールディングス、応用地質などが挙げられます。

日本工営を中核とするID&Eホールディングスは、2024年6月期のグループ連結売上収益が約1,590億円規模で、海外事業に強みを持ちます。創業以来70年以上にわたり160ヵ国超で社会資本づくりのプロジェクトに携わってきた実績がある点が特徴です。
建設技術研究所は河川・防災分野で長年トップクラスの実績を誇り、高い営業利益率を維持しています。パシフィックコンサルタンツは道路・交通分野やPPP/PFIアドバイザリーで国内有数の地位にあり、2024年の業務額ランキングでは前年比12.5%増で業務額500億円台半ばに到達しました。

専門特化型の代表例として、上下水道分野の日水コン、橋梁分野の長大、地質調査分野の応用地質、環境分野のいであ、空間情報・GIS分野のパスコなどがあります。

業界を取り巻く外部環境とトレンド

インフラ老朽化と国土強靭化

業界の最大の追い風は、インフラ老朽化対策の需要拡大です。国土交通省の推計では、建設後50年を経過する社会インフラの割合は、2030年代に道路橋やトンネルで急速に高まる見込みとされています。維持管理・更新需要は今後数十年にわたり継続する見通しです。

政府は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を通じて、継続的かつ安定的に公共事業予算を確保しています。令和6年度の公共事業関係費は6兆828億円、うち国土強靱化関係予算は前年度比+632億円の4兆330億円とされており、防災・減災、国土強靱化関係予算として重点化されています。

防災・減災と脱炭素(GX)

気候変動に伴う自然災害の激甚化を背景に、河川堤防の強化、排水能力の増強、土砂災害対策などの設計需要が高まっています。最新の気象データや地形情報を踏まえたシミュレーション、ハザードマップ作成といった業務も拡大しています。

2050年カーボンニュートラルの目標は、インフラ分野にも大きな変革を要求します。洋上風力発電の基礎構造物設計、再生可能エネルギー導入計画、低炭素建設工法の採用支援など、GX関連の事業領域が広がっています。

BIM/CIM・DX・i-Construction

国土交通省は2023年度から、直轄の公共事業でBIM/CIMの原則適用を打ち出しました。BIM/CIMは建物・構造物の3次元モデルと属性情報を活用し、設計から施工、維持管理までのデータを一気通貫で扱う仕組みです。

あわせて、ドローンによる測量、AIによる点検画像解析、IoTセンサーを用いたインフラ常時監視など、デジタル技術の導入が広がっています。生成AIによる報告書・提案書の下書き作成支援も実務に入り始めており、業務プロセスの再設計が進んでいます。

業界が抱える課題

技術者の高齢化と人材不足

業界の最大の構造課題は人材です。建設業全体の就業者は55歳以上の比率が高く、29歳以下が約1割程度にとどまるなど高齢化が進行しています。
建設コンサルタンツ協会会員企業で働く技術職員の数は、2010年度以降増加に転じ、2022年度に5万人を超え、2023年度時点で53,339人となっていますが、若手の入職者不足は続いています。

会員企業1社あたりの技術士数は2023年度末で約39人/社、技術者総数の約37%を占めています。有資格者の確保は重要な経営課題です。

働き方改革と長時間労働

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。年度末に業務が集中しやすい構造、発注者との仕様調整による手戻り、紙ベースの書類作成といった非効率な業務プロセスが、長時間労働の要因として指摘されてきました。
規制適用により、生産性向上が経営課題として顕在化し、DX投資を加速させる外圧として作用しています。

価格競争と利益率

公共調達における入札では、価格競争の圧力が依然として残ります。一方で、後述する総合評価落札方式やプロポーザル方式の普及により、技術提案の質が評価される場面も広がりました。
会員企業の売上高経常利益率は近年7〜10%台のレンジで推移しており、収益性は底堅く保たれています。

発注方式と関連資格

プロポーザル方式と総合評価落札方式

公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)により、価格のみで選定する方式から、技術提案や実績を評価する方式への移行が進みました。代表的な方式は次の3つです。

プロポーザル方式は、高度な創造性が求められる業務で採用され、最も優れた提案者を選定する方式です。
総合評価落札方式は、価格と技術提案を総合評価して落札者を決定します。
価格競争方式は、定型的な業務で採用される、価格を主要評価軸とする方式です。

大手企業では、プロポーザル方式と総合評価落札方式が受注高の多くを占めるケースもあり、技術力や提案力が受注の鍵を握る構造です。

技術士とRCCM

建設コンサルタント業務に関係の深い技術者資格は、技術士とRCCMです。技術士は科学技術分野の国家資格で、建設、上下水道、農業、電気電子など複数の技術部門に分かれています。建設コンサルタントの登録要件として、登録部門ごとに技術士または認定技術者を専任の技術管理者として置くことが求められます。

RCCM(Registered Civil Engineering Consulting Manager)は、建設コンサルタンツ協会が認定する民間資格です。建設コンサルタント業務における管理技術者・照査技術者などの実務能力を示す位置づけで、技術士を補完する資格として機能しています。

建設コンサルタンツ協会の役割

一般社団法人建設コンサルタンツ協会(JCCA)は、業界の社会的地位向上、技術力向上、海外展開支援、労働環境改善などの活動を行っています。
世界規模では国際建設コンサルタント連盟(FIDIC)があり、関連団体として日本コンサルティング・エンジニヤ協会(AJCE)が加盟しています。

海外案件と新たな事業領域

海外事業の現状

建設コンサルタントの海外事業は、政府開発援助(ODA)関連が中心です。アジアやアフリカなどの新興国におけるインフラ整備需要を背景に、日本企業も海外進出を続けています。日本のODAは発展途上国の社会資本整備に建設コンサルタントが関与する主要なチャネルとなっています。

近年は、非ODA事業として官民連携事業(PPP)への参画拡大も模索されています。国際入札では価格競争が激しく、競争力の強化が課題です。

PPP/PFIとアセットマネジメント

厳しい財政状況にある自治体にとって、民間の資金とノウハウを活用するPPP/PFIは重要な手法の一つとなっています。建設コンサルタントは、事業スキーム構築、事業採算性評価、民間事業者の公募・選定支援などのアドバイザリー業務で関与します。

インフラ老朽化への対応として、アセットマネジメント業務も拡大しています。点検・診断データに基づく中長期的な修繕計画の策定、ライフサイクルコスト分析などが含まれ、継続的な収益が見込めるストック型のサービス領域として注目されています。

今後の展望と求められる対応

業界の今後を方向づけるのは、需要の継続性と供給制約への対応です。インフラ老朽化対策、国土強靱化、GXは長期的な需要を生み出す一方、技術者不足とDX対応への遅れは供給側の制約になります。

勝ち残るプレイヤーには、次のような対応が求められます。第一に、BIM/CIMやデータ活用を前提とした業務プロセスの再構築です。
第二に、土木技術者に加えてデータサイエンティストや事業開発人材を含む多様な人材ポートフォリオの構築です。第三に、設計業務にとどまらず、事業構想やアセットマネジメントといった高付加価値領域への事業シフトです。

発注者・参入検討者が押さえておくべきポイント

発注者が会社選定で見るべき軸

建設コンサルタントへの委託を検討する場合、企業選定では複数の軸を組み合わせて判断することが望まれます。
業務領域と登録部門の適合性、技術士・RCCM保有者数、類似案件の実績、対応地域、BIM/CIM等のDX対応力、契約形態の妥当性などが主な比較軸です。発注経験が浅い場合は、提案依頼書(RFP)で要件を整理したうえで複数社に提案を依頼すると、比較が進めやすくなります。

業界研究・参入検討の観点

業界研究を行う中堅社員や、隣接業界からの参入を検討する経営企画担当者にとっては、業界の構造的特徴を押さえることが出発点になります。
公共依存度の高さ、有資格者を中心とする組織構造、設計・施工分離の原則、長期にわたる維持管理需要といった特徴は、他業界とは異なるビジネスモデルを形成しています。

異業種からの参入は、IT・SaaS企業によるインフラ点検プラットフォーム、総合商社・デベロッパーによるPPP/PFI事業の主導など、バリューチェーンの一部を切り取る形で進んでいます。協業・競合の双方の関係性を持つ業界として捉える視点が有用です。

FAQ

建設コンサルタントとゼネコンはどう違いますか

建設コンサルタントは計画・調査・設計・監理を担い、ゼネコンは施工を担当します。1959年の建設事務次官通達により設計・施工分離の原則が示されており、両者は補完関係にあります。

市場規模はどの程度ですか

建設コンサルタンツ協会会員企業の売上高は、令和5年度(2023年度)に1兆1,309億円規模で、平成26年度から約63%増加しています。国内公共事業に関する建設コンサルタント業務の契約金額も、令和4年度時点で平成24年度から約50%増加しています。

業界の主要な課題は何ですか

技術者の高齢化と若手不足、2024年4月から適用された時間外労働上限規制への対応、生産性向上のためのDX対応が三大課題です。

建設コンサルタントになるために必要な資格はありますか

入社時点で必須の資格はありませんが、長く実務を続けるうえでは技術士やRCCMの取得が重要です。技術士は建設コンサルタント登録要件にも関わる国家資格で、業界内での評価軸になります。

発注時に複数社を比較するにはどうすればよいですか

業務範囲、対応する登録部門、有資格者の構成、類似案件の実績、BIM/CIM対応の有無、見積内訳などを揃えて比較することが望まれます。提案依頼書(RFP)で要件を文章化し、同条件で複数社に提案を求めると公平な比較が進めやすくなります。

まとめ 建設コンサルタント業界の全体像と事業判断の方向性

建設コンサルタント業界は、官公需を主体とした成熟市場でありながら、インフラ老朽化対策・国土強靭化・防災・GXを背景に長期的な需要が見込まれる構造を持つと整理できます。市場規模は会員企業ベースで1兆円超の水準にあり、登録企業数3,959社のうち中小規模が大半を占める一方、ID&Eホールディングスや建設技術研究所、パシフィックコンサルタンツなどの大手と専門特化型がそれぞれの強みで棲み分けています。トレンド面では、BIM/CIMの原則適用やi-Construction、PPP/PFI、アセットマネジメントといった新領域の比重が高まり、業務プロセスや人材構成の再設計が共通課題となっています。一方で、技術者の高齢化、2024年問題への対応、価格競争といった課題は引き続き残り、技術士・RCCMなどの有資格者を軸とした組織運営が経営判断に直結します。自社の新規事業や業務提携を検討する際は、業界の公共依存度の高さと設計・施工分離の原則を前提に、点検・データ活用・PPPアドバイザリーなどバリューチェーン上の参入余地を見極める視点が有用です。社内レポートに落とし込む際には、国土交通省や建コン協会の一次情報を出典として明示し、自社の提供価値が建設コンサルタントの業務プロセスのどこに接続できるかを具体的に整理することをおすすめします。

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建設 コンサルタント 業界に関するよくある質問

導入時に最初に確認すべき点は何ですか?

導入目的と評価指標を先に整理し、比較条件をそろえて検討することが重要です。あわせて運用体制や予算上限を明確にすると、選定の手戻りを減らせます。

比較検討で失敗を避けるにはどうすればよいですか?

料金や機能だけで判断せず、サポート範囲や契約条件、運用時の負荷まで確認してください。候補ごとに同じ評価軸で比較し、必要に応じて試験導入で検証すると判断しやすくなります。

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